こんにちは。SnapGadget、運営者の「すながじぇ」です。
コンデジで撮った写真を見たら、いつも同じ場所に黒い点が写り込んでる…。これ、気になりますよね。もしかしてセンサーのゴミ?と思って、「コンデジ センサークリーニング」で検索したんじゃないでしょうか。
そうすると、キタムラで3,300円とか、料金は安い、みたいな情報が出てきたりします。でも一方で、ソニーやリコーといったメーカーに修理を頼むと高額だとか、そもそもコンデジはセンサークリーニングができない、なんて話もあって、一体どれが本当なの?と混乱しちゃいますよね。
自分でブロアーや掃除機を使ってなんとかできないか…なんて考えてしまうかも。この記事では、そんなあなたの疑問に、カメラの構造的な真実からバッチリお答えしていきますよ。
- コンデジのセンサー清掃が「無理」な構造的理由
- 「キタムラ」で断られる?安価なサービスの真実
- メーカー修理(ソニー/リコー)の高額な費用目安
- 修理か買い替えか、現実的な判断基準
コンデジのセンサークリーニングが「無理」な理由
まず結論からお伝えしなきゃいけないんですが、あなたが期待している「安くて早いセンサークリーニング」は、残念ながらコンデジには適用できません。その「なぜ?」を、カメラの構造からひも解いていきましょう。

できない理由:コンデジの構造
「なぜコンデジはセンサークリーニングができないのか?」…その答えは、コンデジの「構造」にあります。一言でいうと、「レンズとセンサーが、分解できない一つの部品になっているから」なんです。
コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)は、レンズとイメージセンサーが「レンズユニット」という一つの部品として一体化されています。これは、製造工場のチリ一つない「クリーンルーム」で、ものすごく精密に組み立てられています。複数のレンズ群、光の量を調整する絞り機構、そして光を受け取るイメージセンサー。これら全てが、ユニット全体として密閉(シーリング)された状態で、カメラ本体にドンと組み込まれているんですよ。
つまり、どういうことか。私たちユーザーはもちろん、専門の修理技術者ですら、カメラを(破壊せずに)分解してセンサーに物理的にアクセスすることが一切不可能なんです。
サブミクロン単位の精密さ
「精密」と言っても、ピンと来ないかもですが、レンズユニットの組立精度は「サブミクロン単位」…つまり1000分の1ミリ以下のレベルで調整されています。光軸(レンズの中心線)がコンマ数ミリでもズレたら、もうまともなピントは結べません。この精度を維持したまま分解・清掃・再組立するなんて、メーカーの製造ライン以外では不可能なんですよ。
「え、でも待って。密閉されてるなら、なんでそもそもゴミが入るの?」…はい、そこが最大の疑問ですよね。分かります。この「密閉」は、実は完璧な「真空密閉」とはちょっと違うんです。
ゴミが入る原因は、主に2つあると言われています。
原因1:製造時の微細なチリの混入
クリーンルームで組み立てられるとはいえ、100%の無菌・無塵は不可能です。製造・組立の過程で、目に見えないレベルの微細なチリがユニット内部に混入してしまうことがゼロではありません。これが長期間使ううちに静電気などでセンサーに引き寄せられて、ある日突然「黒い点」として姿を現すことがあります。
原因2:レンズの「呼吸」による吸引
これが、後からゴミが入る最大の原因とされています。コンデジの多くは、電源を入れるとレンズが「ウィーン」と伸び縮みする「沈胴式(ちんどうしき)ズームレンズ」を採用していますよね。
この鏡筒(レンズの筒)が伸び縮みするとき、ユニット内部の空気がわずかに出入りします。これがポンプのように作用して(まさに「呼吸」です)、外部の非常に微細なホコリを、鏡筒のわずかな隙間から吸い込んでしまうことがあるんです。
防塵防滴をうたっているタフネス系のコンデジでも、この「呼吸」による空気の出入りをゼロにすることは難しく、長年使っているとホコリが侵入するリスクは常につきまといます。
そして一度この「密閉空間」に入り込んでしまったホコリは、もう二度と外に出すことができません。だから、一眼レフのように「ブロアーでシュポシュポ」が通用しない。これが「清掃できない」と言われる根本的な理由なんです。
一眼レフやミラーレスとの根本的な違い

「でも、一眼レフやミラーレスは、普通にセンサークリーニングできるじゃないか!」…その通りです。そこがまさに、コンデジとレンズ交換式カメラの設計思想と構造の決定的な違いなんですよ。
デジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラは、その名の通り、レンズとカメラボディを分離できますよね。レンズをボディから取り外すための「マウント」という接続部分があります。
レンズを外すとどうなるか。ミラーレスカメラならイメージセンサーが直接こんにちは。一眼レフならシャッター幕の奥にセンサーがあります(クリーニングモードにすればミラーとシャッター幕が開いてセンサーが露出します)。
この「開放構造」は、レンズ交換時に外のホコリがマウント内部に侵入し、センサーに付着しやすいという最大の弱点を持っています。私も、屋外でレンズ交換したあとに「あ、ゴミ入ったかも…」とヒヤヒヤすることはしょっちゅうです。
しかし、この構造は同時に「センサーに物理的にアクセスできる」ことを意味します。最大の弱点であると同時に、最大のメンテナンス性を確保しているわけです。
設計思想の違い
- レンズ交換式カメラ:「レンズ交換で汚れるのは当たり前。だから、清掃できるようにしておこう」
- コンパクトデジタルカメラ:「レンズもセンサーも密閉して、汚れないようにしよう。だから、清掃する必要はない(はず)」
コンデジのセンサーゴミ問題は、この「汚れないはず」という設計思想の前提が、長期間の使用(レンズの呼吸)によって崩れてしまった時に発生する、非常に厄介な問題なんです。
センサーにアクセスできるからこそ、私たちユーザー自身がブロアーでホコリを吹き飛ばしたり、専用のクリーニングキット(通称「ペッタン棒」とか)を使ったりできます。そして、「カメラのキタムラ」や「カメラの大林」のような専門業者が、「センサークリーニング 3,300円」といった安価(数千円程度)で迅速な清掃サービスを提供できるわけです。
さらに、最近のレンズ交換式カメラのほとんどは「ダストリダクション機能」を搭載しています。これは、電源のON/OFF時などに、センサー自体を高速でブルブルと振動させて、付着したホコリをふるい落とす機能です。これも「汚れる前提」の設計思想から生まれた機能ですよね。
(一部のコンデジにも搭載されていることがありますが、内部で舞っているホコリを落とせても、密閉空間から外に出すことはできないので、根本的な解決にはなりにくいのが実情です…)
この「構造の違い」を理解することが、コンデジのセンサーゴミ問題を解決する第一歩になります。下の表で、その違いをもう一度ハッキリさせておきましょう。
| 比較項目 | 一眼レフ・ミラーレスカメラ(レンズ交換式) | コンパクトデジタルカメラ(レンズ一体型) |
|---|---|---|
| センサーへのアクセス | レンズを外せば容易にアクセス可能 | アクセス不可能(レンズユニット内に密閉) |
| ホコリの侵入経路 | レンズ交換時(開放部から) | ズーム動作による吸い込み、または製造時の混入 |
| 主な対処法 | クリーニング(清掃) (ブロアー、清掃キット、専門店のサービス) | 修理(レンズユニット全体の交換) |
| 専門店の対応 | 3,300円程度で即日清掃サービスが利用可能 | サービス対象外(「外観清掃」のみ) |
| メーカーの対応 | 安価な清掃サービス、または修理 | 高額な修理(レンズユニット交換) |
まずはレンズ表面の清掃を試す

「もうダメだ…私のコンデジは修理決定だ…」と絶望する前に、まず落ち着いてください!まだ希望はあります。
写真に写り込む黒い点、もしかしたらセンサーじゃなくて、ただ単にレンズの「表面」についているだけのホコリや汚れかもしれません。
特に、レンズ表面に付いた指紋の脂に、小さなホコリがくっついているケース。これはセンサーゴミと見分けがつきにくいことがありますが、対処法は天と地ほど違います。こちらは、自分で、無料で、数分で解決できます!
センサーゴミ(内部)だと決めつける前に、まずは以下の「レンズ表面の清掃」を徹底的にやってみてください。これは一番よくあるケースで、一番簡単に解決できる原因ですからね。
ステップ1:清掃環境の準備
まずは、明るい場所(昼間の窓際や、明るい照明の下)で行いましょう。暗いと汚れが見えません。また、風が吹いていたり、ホコリっぽい部屋(掃除したてとか)は避けてください。せっかく掃除しても新しいホコリがついちゃいますからね。
ステップ2:ブロアーでのホコリ除去
これが最重要ステップです。レンズ表面には、目に見えない硬い砂粒やチリが付着していることがあります。これをいきなり布でこすると、レンズのコーティングに致命的な傷(いわゆる「拭き傷」)をつけてしまいます。
必ず、ブロアー(空気をシュポシュポするやつ)を使って、レンズ表面のホコリを強い風で吹き飛ばしてください。シュポシュポ、シュポシュポ、と。レンズのフチに溜まったホコリも念入りに吹き飛ばします。
缶エアダスターは使っちゃダメ?
「ブロアーより強力な缶エアダスター(OA機器用スプレー)じゃダメ?」と思うかもですが、個人的には非推奨です。あれは噴射の勢いが強すぎるのと、角度を間違えると冷却ガス(液体)が「ブシュッ!」と出てしまうことがあります。デリケートなレンズコーティングを痛めたり、結露させたりするリスクがあるので、手動のブロアーが無難ですよ。

ステップ3:クロスやペーパーでの拭き上げ
ブロアーで大きなホコリを飛ばしたら、次はいよいよ拭き上げです。レンズ表面の指紋や、こびりついた汚れを落とします。
使うのは、専用の「クリーニングクロス(マイクロファイバー)」か「レンズペーパー」です。ティッシュペーパーやメガネ拭きは、繊維が硬かったり、ホコリが出たりするので避けてください。
拭き方のコツ:
- レンズの中心から、円を描くように「の」の字を書くように、優しく拭き上げます。ゴシゴシ力を入れちゃダメですよ。
- 汚れがひどい(指紋ベッタリなど)場合は、レンズペーパーに専用の「クリーニング液」を1滴だけ垂らして、同じように拭き、乾いたペーパーで乾拭きします。
- (私はよくやっちゃいますが)「ハァ〜」っと息を吹きかけて拭くのは、唾液の微細な飛沫がつく可能性があるので、本当はあまり良くないです(笑)。クリーニング液を使うのがベストです。
もしあなたのコンデジに「レンズフィルター」が装着できるタイプなら、まずはフィルターを外して、フィルター自体も同じ手順で清掃してください。フィルターが汚れていただけ、というオチも結構ありますからね。
さあ、どうでしょう。この清掃が終わったら、もう一度カメラの電源を入れて、白い壁などを試し撮りしてみてください。これで写真のシミが消えていれば、万事解決!おめでとうございます!高額な修理を心配する必要は全くありませんでした。
センサーゴミか診断する方法
レンズ表面をピカピカに清掃した。フィルターも掃除した。…それでも、写真の「あの場所」に、あの「黒い点」がまだ写り込む…。

こうなると、いよいよレンズユニットの「内部」、特にイメージセンサー表面に付着したゴミである可能性が非常に高くなってきました。ここで、それを「100%確定させるための診断方法」を紹介します。この診断結果によって、あなたの取るべき次の行動が「メーカー修理(高額)」か「我慢して使う(0円)」かに分かれます。
この診断は、「ゴミの影を、意図的にクッキリと写す」のが目的です。すごく簡単なので、落ち着いてやってみてください。
ステップ1:最適なカメラ設定
まず、カメラの設定を変更します。一番簡単なのは、撮影モードを「絞り優先オート(AまたはAvモード)」にすることです。
- 撮影モード:絞り優先オート(AまたはAv)
- 絞り値(F値):F16、F22など、そのカメラが設定できる最も小さい絞り(最も大きい数値)に設定します。ここが最重要ポイントです。
- ISO感度:ISO100や200など、一番低い感度に設定します(画質をクリアにするため)。
- ピント:オートフォーカス(AF)でOKですが、可能ならマニュアルフォーカス(MF)にして、ピントを「無限遠(∞)」に固定すると、より確実です。
【すながじぇの豆知識:なぜ絞るとゴミが写る?】
カメラの「絞り」は、光が通る穴の大きさです。絞りを絞り込む(F値を大きくする)と、光が通る穴が小さくなりますよね。
穴が小さいと、入ってくる光がより「直線的」になります。その結果、センサーの直前にある小さなゴミの「影」が、写真上ではっきりとシャープな「黒い点」として写り込むようになるんです。(専門用語で「被写界深度が深くなる」と言いますが、ここでは「影がクッキリする」と覚えておけばOKです)
逆に、絞りを開く(F値が小さい。F2.8とか)と、光がいろんな角度からセンサーに届くため、ゴミの影はボヤけて拡散し、写真上では見えなくなってしまいます。だから、普段の撮影では気づかなかったりするんですよ。
ステップ2:撮影対象の選び方
設定ができたら、撮影対象を選びます。ゴミの影をハッキリさせるには、「明るくて均一な、無地のもの」が最適です。
- 快晴の青空(雲ひとつないのがベスト)
- 真っ白な壁紙(ただし、壁のシミや模様に惑わされないように注意)
- PCのモニター(メモ帳やWordなどを全画面表示にして、真っ白な画面を作る)
個人的には、PCモニターの真っ白な画面が、一番確実でオススメです。
ステップ3:撮影時のテクニック
撮影対象が決まったら、それにピントを合わせ(青空なら無限遠)、シャッターを切ります。この時、もし手ブレ補正があるならONにしておくか、三脚を使うとより確実です(絞っているのでシャッタースピードが遅くなりがちです)。
さらに、カメラ本体を上下左右に少し「振りながら」撮影するのも有効なテクニックです。もし写っている点が「壁のシミ」なら、カメラを振れば点の位置は動きます。でも「センサーゴミ」なら、カメラをどう振ろうが、常に画面の同じ位置に居座り続けます。
ステップ4:PCでの最終確認
撮影した画像を、スマートフォンの小さな画面ではなく、必ずPCのモニターなど大きな画面で確認します。画像を等倍(100%)表示にして、隅々までチェックしてください。
そして、ダメ押しの確認です。コンデジのズームを「広角側」と「望遠側」の両方で、それぞれ同じ診断撮影をしてみてください。
もし、すべての写真の「常に同じ位置」に、「ズーム操作をしても大きさが変わらない」黒い点があれば…残念ですが、それはレンズユニット内部(ほぼセンサー表面)のゴミであると、ほぼ断定できます。(※もしズームすると点の大きさが変わるなら、それはセンサーではなく、レンズ内部のゴミの可能性が高いですが、対処法は同じく「メーカー修理」です)
自分でブロアーを使うリスク

さて、内部のゴミだと確定してしまった。メーカー修理は高額だ。じゃあ…「自分でなんとかできないか?」…そう考えるのが人情ですよね。私も過去に何度もそう思いました。
「レンズが伸縮する隙間に、ブロアーで『シュッ!』と強く風を送ったら、中のゴミも動いてどっか行ってくれないかな?」
「あるいは逆に、掃除機のノズルを隙間に当てて、ゴミを吸い出せないか?」
その気持ち、痛いほど分かります。でも、専門家の立場からハッキリ言わせていただきます。それは絶対にやめてください! 良くなる可能性はゼロに近く、状況を最悪にするリスクしかありません。
一眼レフやミラーレスでセンサーが露出している状態なら、ブロアーは「ホコリを吹き飛ばす」ための必須アイテムです。しかし、相手は「密閉されたユニット内部」です。状況が全く違います。
ブロアー:ホコリを押し込むリスク
コンデジの鏡筒(ズームで伸縮する部分)の隙間は、ホコリが入らないように(ある程度)シーリングされています。そこに無理やりブロアーで強風を送り込むとどうなるか。
逆に、外部の新しいホコリを、ユニット内部に押し込んでしまう危険性が非常に高いです。良かれと思ってやった「シュッ!」が、ゴミを1個から5個に増やしてしまうかもしれないんですよ。
また、運良く内部のゴミに風が当たったとしても、そのゴミが都合よく写らない場所に移動してくれる保証はどこにもありません。むしろ、今まで端っこにいたゴミが、舞い上がってセンサーのど真ん中に移動し、症状が悪化するケースも考えられます。
掃除機:静電気と内部破壊のリスク
「じゃあ吸い出せば…」これも絶対にNGです。掃除機のノズルを精密機器に近づける行為自体が危険すぎます。
まず、掃除機のブラシやノズルは、摩擦で強烈な静電気を帯びています。これを電子機器であるカメラに近づければ、静電気放電(バチッ!)で内部の電子回路が破壊され、カメラが二度と起動しなくなる可能性があります。
また、コンデジの鏡筒は非常にデリケートな部品で組み上がっています。家庭用掃除機の強力な吸引力で、内部の精密なギアやレンズの部品がズレたり、破損したりするリスクもあります。ゴミを取るどころか、カメラを物理的に破壊してしまうかもしれません。
缶エアダスター:結露によるカビのリスク(最悪)
「ブロアーより強力な缶エアダスターなら…」これは、考えうる中で最悪の選択肢です。
缶エアダスターは、噴射の勢いが強すぎるだけでなく、気化熱で冷却されたガス(時には液体)を噴射します。もしこの冷却ガスがレンズユニット内部に入り込むと、内部のレンズやセンサー表面で「結露」が発生します。
密閉空間で一度発生した水分は、簡単には蒸発しません。その結果、どうなるか。…はい、カビです。センサーやレンズにカビが生えたら、もう修理交換以外に道はありません。ゴミどころか、カメラとして再起不能なダメージを与えてしまうんです。
自己流の対処は「百害あって一利なし」
コンデジの内部ゴミに対して、ブロアーや掃除機、エアダスターといった自己流の対処法は、すべて「ハイリスク・ノーリターン」です。
状況を悪化させ、修理費用をさらに吊り上げ、最悪の場合はカメラを完全に破壊してしまいます。高額な修理費用を節約したいという気持ちが、逆にとんでもない出費を招くことになるので、絶対に手を出さないでくださいね。

コンデジのセンサークリーニングの現実的な対処法
レンズ表面のゴミではなく、内部のゴミだと確定してしまった。そして安価な清掃も、自分でやるのも絶対にダメ。…じゃあ、一体どうすればいいのか。ここからは、あなたが取るべき、唯一にして現実的な対処法を、費用や窓口も含めて具体的に解説します。

キタムラの料金3300円は?
「コンデジ センサークリーニング」で検索したあなたが、まず希望の光として見つけたであろう情報。それが「カメラのキタムラ」や「カメラの大林」といったカメラ専門チェーン店が提供する、非常に魅力的なサービスですよね。
- 「センサークリーニング 税込3,300円」
- 「最短10分でお渡し可能」
- 「最短当日仕上げ」
これらの情報を見て、「おお、3,300円で、しかも今日中に解決できるんだ!ラッキー!」と期待するのは当然です。私もカメラを始めたばかりの頃は、そう思っていました。
しかし、残念ながら、これはコンデジ所有者にとっては「検索結果の罠」とも言える誤解なんです。これらの安価な「センサークリーニング」サービスは、コンデジには適用できません。
なぜコンデジは対象外なのか
なぜか?…もうお分かりですよね。この記事の前半で解説した通り、コンデジは構造的にセンサーにアクセスできないからです。
キタムラの公式サイトをよく見ると、この3,300円のサービス(※料金は店舗や時期によって変わる可能性があります)は、対象機種が「レンズ交換型カメラのみ」とハッキリ明記されています。対象例として挙げられているのは「APS-Cサイズ以下(キヤノンEOS KISSシリーズなど)」や「35mmフルサイズ(ソニーα7シリーズなど)」…これらはすべて、レンズが外せるカメラです。
清掃作業は、レンズを外し、専用の機材(ブロアーや、薬剤をつけた専用のクリーニングスティック)を使って、露出したセンサー表面を物理的に拭き上げるものです。レンズが外せないコンデジには、この作業自体が物理的に不可能なわけです。
あなたが意気揚々とコンデジをキタムラのカウンターに持ち込んでも、店員さんからは、おそらくこう説明されます。
「あ、お客様…大変申し訳ないのですが、こちらのカメラはコンデジ(レンズ一体型)ですので、当店でのセンサークリーニングサービスの対象外となっております。構造的に、私たちがセンサーを清掃することができないんです…」
「クイックメンテナンス」は解決策になるか?
キタムラには、もう一つ「クイックメンテナンス(税込1,100円程度)」といった安価なサービスもあります。「じゃあ、そっちは?」と思うかもしれませんが、これも解決策にはなりません。
このサービスの内容は、公式に「ボディ外観掃除」や「レンズ・フィルター外観掃除」とされています。つまり、この記事の最初の方で解説した「レンズ表面の清掃」をプロがやってくれる、というものです。
もちろん、外観はピカピカになりますし、レンズ表面のゴミが原因であれば、これで問題は解決します。しかし、あなたがもし「内部のセンサーゴミ」で悩んでいるのであれば、このサービスを受けても症状は1ミリも改善しません。
じゃあキタムラに頼む意味はないの?
「クリーニングがダメなら、キタムラに『修理』は頼めないの?」…はい、それは可能です。
キタムラは各メーカーの正規修理受付窓口にもなっています。ですから、キタムラにコンデジを持ち込んで「センサーゴミの修理をお願いします」と依頼することはできます。
ただし、その場合キタムラがその場で修理するのではなく、カメラをメーカーの修理センターへ送る「取次」となります。つまり、結局やることは「メーカー修理」と同じです。費用もメーカー正規料金+取次手数料(かかる場合)ですし、期間もメーカーに直接出すのと同じか、それ以上(輸送にかかる分)かかります。
結論として、「安くて早いクリーニング」はコンデジには存在せず、店舗に持ち込んでも結局は高額な「メーカー修理」の道しかない、という現実を理解することが重要です。

ソニーの修理費用は高額か
安価なクリーニングがダメとなると、残された唯一の根本的な物理的解決策は、そのカメラの製造元(ソニー、キヤノン、リコーなど)の公式サポートに「修理」を依頼することです。
ここで、もう一度強く強調しておきます。これは「清掃(メンテナンス)」ではなく「修理」扱いになります。そしてその対応は、多くの場合「センサーのゴミをピンセットでつまんで取る」なんて生易しいものではなく、「レンズユニット一式を丸ごと新品に交換する」という、非常に大掛かりなものになるのが一般的です。
そうなると、気になるのは「費用」ですよね。
特にソニーのCyber-shot(サイバーショット)シリーズ、中でもRX100シリーズのような1インチセンサーを搭載した高級コンデジや、RX10シリーズのような高倍率ズームレンズを搭載したモデルは、その修理費用が極めて高額になるケースが報告されています。
あくまでネット上の報告例ですが、あるユーザーがセンサーゴミで修理見積もりを依頼したところ…
- 交渉前の提示額:80,000円 ~ 110,000円
- 交渉後の価格(減額後):44,000円
…といった、驚くような金額が提示されたという話があります。
…正直、絶句しますよね。44,000円でも高いのに、交渉前は10万円超え。これ、新品のRX100シリーズが普通に買えてしまう水準です。なぜこんなに高額になるかというと、RX100シリーズの「レンズユニット(ツァイスレンズと1インチセンサーが一体化した部品)」自体が、カメラのコストの大半を占める超高価な部品だからです。部品代+技術料で、このくらいの金額になってしまうわけです。
もちろん、これはあくまで一例であり、すべてのソニー製コンデジがこうなるとは限りません。機種や症状、保証期間(期間内なら無償の可能性も)によって大きく異なります。
大切なのは、まず「これくらい高額になる可能性がある」という覚悟を持った上で、メーカーの公式サポートにコンタクトを取ってみることです。
まずは公式サイトで目安を確認
メーカーによっては、公式サイトで修理料金の「目安」を公開している場合があります。例えばソニーのサポートページでは、機種名と症状を選ぶと概算の料金が確認できるシステムがあります。
(例:ソニー「修理のご相談」(出典:ソニー公式サイト))
あなたの持っている機種の修理代がいくらくらいか、まずはこうした公式情報で調べてみるのが第一歩ですよ。(※ただし、コンデジのセンサーゴミは「レンズユニット交換」となるため、「その他」や「レンズ関連」の見積もりとなり、高額な料金が提示されることが多いです)
リコーGRの修理費用目安
ソニーの高額な事例を見ると「もうコンデジ怖い…」となってしまいそうですが、メーカーや機種によって、その傾向は少し異なるようです。
その代表例が、スナップシューターに絶大な人気を誇る高級コンデジ「リコー GR」シリーズです。
実は、GRシリーズは(特に旧モデルは)その構造上、センサーゴミが混入しやすい機種として以前から知られています。レンズ鏡筒の隙間からホコリを吸い込みやすいのでは?と、ユーザー間では長年ささやかれています。その代わり(?)というか、メーカー側もそれをある程度把握しているのか、修理対応が比較的こなれている印象があります。
GRシリーズも、センサーゴミの修理はソニーと同様に「レンズユニットを丸ごと交換」となります。ですが、報告されている費用は、ソニーの例とは少し様相が異なります。
ネット上の報告例(あくまで目安です!)を見ると…
- GR Digital IV(2011年発売)の事例で:約13,000円
- GR II(2015年発売)の公式簡易見積もりで:約17,280円
といった報告がいくつか見られます。もちろん安くはありませんが、ソニーの「4万円~10万円」という数字と比べると、かなり現実的に「修理して使い続ける」ことを検討できる範囲の金額かなと思います。
(ただし、当時の中古相場が25,000円前後だったのに対し修理代が13,000円、と考えると、やはり「高額修理」であることには変わりありませんが…)
GR Ⅳ / GR III / IIIx はどうなの?
注意したいのは、これらの事例は少し前のモデル(GR Digital IVやGR II)だということです。
GR IIIやGR IIIxは、新たにボディ内手ぶれ補正(SR)が搭載されました。これは、センサーユニット自体が物理的に動いてブレを補正する、非常に高度な機構です。そのため、レンズユニット(またはセンサー周辺ユニット)の構造が旧モデルより複雑化しており、修理費用(ユニット交換費用)は、旧モデルよりも高額になる可能性が高いと予想されます。
リコー(ペンタックス)は修理サポートが手厚いことでも知られていますが、いずれにせよ「GRだから修理が安い」と油断せず、必ず現行機種の修理見積もりをメーカーに直接依頼してくださいね。
メーカー修理はユニット交換

ソニーやリコーの例を見てきましたが、ここで「各メーカー共通の対応」について、もう一度おさらいしておきます。
キヤノン (PowerShotシリーズ)、ニコン (COOLPIXシリーズ)、パナソニック (LUMIXシリーズ)、富士フイルム (X100シリーズなど) …どのメーカーのコンデジであっても、内部のセンサーゴミ問題に対する根本的な対処法は「メーカー修理」であり、その対応は「レンズユニット一式の交換」となるのが基本中の基本です。
なぜ、どのメーカーも「分解清掃」という安上がりな対応をしてくれないのか。それは「できない」のではなく、「やってはいけない」からです。
この記事で何度も触れていますが、レンズユニットは、光軸や各レンズ群の位置がサブミクロン単位(1000分の1ミリ)で完璧に調整された、超精密な光学機器の塊です。
分解清掃が「非現実的」な理由
- さらなるホコリの混入:メーカーの製造ライン(クリーンルーム)でもない、通常の修理センターの環境で精密なユニットを分解すれば、ゴミを取り除くどころか、さらに大量のホコリが内部に混入するリスクが高すぎます。
- 光軸のズレ(致命的):一度分解したユニットを、サブミクロン単位の精度で元通りに組み上げることは不可能です。光軸がズレれば、ピントが合わない、画面の片側だけボケる(片ボケ)、解像度が著しく低下するなど、カメラとして致命的な性能低下を招きます。
「ゴミは取れたけど、ピントが合わないカメラになりました」では、修理の意味がないですよね。だからこそ、メーカーは「分解清掃」という非現実的な対応は行わず、「性能を100%保証できる、新品のレンズユニットと丸ごと交換する」という、唯一確実な方法を選ぶわけです。
そして、その修理費用は「高価なレンズユニットの部品代」+「交換技術料」の合計となります。これが、コンデジのセンサーゴミ修理が高額になる根本的な理由です。
修理期間にも注意
もう一つの注意点が「修理期間」です。キタムラなどの「即日清掃」とはワケが違います。
メーカー修理の場合、カメラを発送(または持ち込み)してから、見積もり連絡が来て、修理を実行し、手元に戻ってくるまで、一般的に10日~2週間程度の時間が必要です。部品の在庫状況によっては、それ以上かかることもあります。
「来週の旅行に持っていきたかったのに!」といった事態にならないよう、修理に出す際はスケジュールにも余裕を見ておく必要がありますよ。

修理と買い替えの判断基準

さて、ここまでの情報で、あなたのコンデジの黒い点が「内部のセンサーゴミ」であり、その解決策は「高額なメーカー修理(レンズユニット交換)」しかない、という厳しい現実がご理解いただけたかなと思います。
あなたが取るべき最も合理的で、失敗しない行動は、まずメーカーのサポートに連絡し、「修理見積もり」を正式に依頼することです。そして、メーカーから提示された「具体的な金額」を見てから、最終的な判断を下します。
その「最終判断」とは、「提示された金額を払って修理するか」、それとも「修理は諦めて、新しいカメラに買い替えるか」という二択です。
この判断を間違えないために、冷静に比較検討すべきポイントを整理します。
天秤にかけるべき2つの要素
メーカーから提示された「見積金額」と、以下の2つを天秤にかけてください。
- そのカメラの「現在の価値」(=中古市場での価格)
- 「新品の現行モデル」や「欲しいと思っている別のカメラ」の価格
この比較で、どちらを選ぶべきかが見えてきます。
パターン1:修理した方が良いケース
以下のような場合は、高額でも修理する価値があるかもしれません。
- 購入したばかり(保証期間内):購入後1年以内の「通常使用」でのセンサーゴミ混入は、メーカー保証(無償修理)の対象となる可能性があります!これは絶対にまず確認すべき点です。
- 修理代が中古相場より安い:例えば、中古で5万円するカメラの修理代が1万5千円なら、修理した方が経済的です。
- そのカメラに強い愛着がある:生産終了したモデルで、どうしても「このカメラじゃなきゃダメなんだ!」という強い愛着がある場合。これはもう、プライスレスな価値ですよね。
パターン2:買い替えた方が良いケース
以下のような場合は、修理をキャンセルして買い替えを検討するのが合理的です。
- 修理代が中古相場を超える:これが一番分かりやすい基準。例えば、修理代が4万円と提示されたのに、そのカメラの中古相場が3万円だったら…修理するより中古で同じものを買い直した方が安い、ということになります(またゴミが入るリスクはありますが)。
- カメラ自体が古い:5年以上前のモデルで、AFの速さ、画素数、動画機能、高感度耐性など、現在のカメラと比べて性能に不満が出てきていた場合。これは「買い替えの絶好のタイミング」と前向きに捉えるチャンスです。
- 修理代を頭金にステップアップ:提示された修理代が3万円だったとして、「この3万円を修理に使うより、頭金にして、前から欲しかったあの新しいカメラを買おう!」と考えるのも、非常に賢明な判断です。
いずれにせよ、まずは「メーカー修理見積もり」を依頼しないことには始まりません。(※見積もりを依頼して修理をキャンセルした場合、「見積もり料・診断料」として数千円程度がかかる場合がありますが、数万円の判断をするための必要経費と割り切りましょう)
コンデジ センサークリーニングの結論
最後に、この記事の総括として、そしてあなたへの最後のお願いとして、「自分で分解清掃」という選択肢について、もう一度、これでもかというくらい強く警告しておきます。
修理費用が高額である(数万円)と知り、安価なサービスも利用できない(3,300円は無理)と知ったユーザーが、最終的にたどり着いてしまう恐ろしい選択肢…それが「自己分解」です。「リスク覚悟で自分で掃除する」というブログ記事やYouTube動画も、探せば出てくるかもしれません。
ですが、断言します。素人がコンデジのレンズユニットを分解する行為は、「修理」ではなく「破壊」です。高額な修理費用を節約しようとした結果、カメラを完全な「文鎮」(=機能しないただの固まり)にしてしまうのが現実です。
自己分解が「自殺行為」である理由
あなたがもし「自分は手先が器用だから…」と思っていても、以下のリスクを乗り越えることは不可能です。
- リスク1:分解の入り口で詰む
カメラの外装は、巧妙な隠しネジや、プラスチックの微細なツメで固定されています。専用の工具と知識がなければ、外装をバキバキに割り、傷だらけにするだけで終わります。 - リスク2:内部の罠「フレキ」の断線
内部には、基板と部品をつなぐ、髪の毛より細い「フレキシブルケーブル(フレキ)」が縦横無尽に走っています。これは「引っ張る」のではなく「ラッチを起こして抜く」のが基本ですが、知識がなければ一発で引きちぎり、断線させます。断線=カメラの死、です。 - リスク3:レンズユニットという魔境
仮にレンズユニットまでたどり着けても、そこからが本番。クリーンルームでもないホコリだらけの自室で精密ユニットを分解すれば、ゴミが「1個」から「100個」に増えるだけ。状況は確実に悪化します。 - リスク4:元に戻せない「光軸のズレ」
最大の難関。奇跡的にゴミが取れても、サブミクロン単位で調整されたレンズやセンサーを、元の位置に完璧に戻すことは絶対に不可能です。結果、ピントが合わない、片ボケする、解像度がガタ落ちするなど、カメラとしての性能を完全に失います。
最大のペナルティ:メーカーサポートの永久追放
そして何より、一度でも自己分解を試みた(ネジを外した形跡がある)カメラは、その瞬間にメーカーの正規修理サポートを一切受けられなくなります。
「自分でやったら壊れたから、やっぱりメーカーさんお願いします」は通用しません。「お客様、ご自身で分解された形跡がありますので、修理はお受けできません」と、冷たく返送されてくるだけです。
数万円の修理代をケチった結果、そのカメラの価値を完全にゼロにしてしまう。これが自己分解の結末です。
コンデジのセンサークリーニング問題は、「安価なメンテナンス」の領域ではなく、「高額な修理」または「経済的な買い替え判断」の領域に属するものです。
ここまで読んでくれたあなたが取るべき、現実的かつ合理的な行動ステップは、以下の通りです。
- 【診断】まずはレンズ表面の清掃を徹底的に行う。
- 【確定】ダメなら「絞り診断(F16撮影)」で内部ゴミであることを確定させる。
- 【理解】キタムラ等の安価なサービスは「対象外」である現実を理解する。
- 【見積】「自己分解」や「ブロアー」の誘惑を断ち切り、メーカー正規サポートに「修理見積もり」を正式に依頼する。
- 【判断】提示された見積金額と、そのカメラの価値(中古相場)を冷静に比較し、「修理する」か「買い替える」かを最終判断する。

