ソニーのAPS-Cミラーレスカメラ、α6700とα6400の比較を検討されているのですね。この2機種は、発売時期も性能も大きく異なるため、どちらを選ぶべきか悩むのは当然のことです。
この記事では、α6700とα6400の基本スペックを比較し、センサー性能の違いをチェックします。また、オートフォーカス性能の進化点や、動画撮影機能はどちらが優秀かについても詳しく解説します。
さらに、手ぶれ補正の有無と効果の差、デザインや操作性の違い、そしてバッテリー持ちと実用性を比較します。最終的に、α6700とα6400の価格差とコスパを分析し、写真撮影メインならどっちを選ぶべきか、α6700とα6400のおすすめポイントまとめを通じて、あなたの使い方に最適な一台を見つけるお手伝いをします。
- α6700とα6400の技術的な進化と具体的な性能差
- 写真撮影と動画撮影、それぞれの目的にどちらが適しているか
- AI搭載AFやボディ内手ブレ補正が撮影体験に与える影響
- 価格差を踏まえた上で、どちらのモデルが自分にとって最適か
α6700とα6400を徹底比較:主要な性能と進化点

- α6700とα6400の基本スペックを比較
- センサー性能の違いをチェック
- オートフォーカス性能の進化点
- 動画撮影機能はどちらが優秀?
- 手ぶれ補正の有無と効果の差
α6700とα6400の基本スペックを比較

α6700とα6400は、同じAPS-Cセンサーを搭載するミラーレスカメラですが、その中身は大きく異なります。α6400が2019年に発売された高性能スタンダード機であるのに対し、α6700は2023年に登場した次世代のプレミアムモデルです。
両者の主な違いを理解するために、まずは主要なスペックを表で確認してみましょう。
| 仕様項目 | Sony α6700 | Sony α6400 |
| 発売日 | 2023年7月28日 | 2019年2月22日 |
| センサー | APS-C 裏面照射型 Exmor R CMOS | APS-C 表面照射型 Exmor CMOS |
| 有効画素数 | 約2600万画素 | 約2420万画素 |
| 画像処理エンジン | BIONZ XR | BIONZ X |
| 常用ISO感度 | 100 – 32000 | 100 – 32000 |
| AFシステム | ファストハイブリッドAF | ファストハイブリッドAF |
| 測距点数 | 最大759点 (位相差検出) | 425点 (位相差) / 425点 (コントラスト) |
| 被写体認識 | AIプロセッシングユニット搭載 (人物, 動物/鳥, 昆虫, 車/列車, 飛行機) | リアルタイム瞳AF (人物, 動物) |
| ボディ内手ブレ補正 | 5軸補正 (5.0段) | なし |
| 動画性能 | 4K 120p / 4K 60p (6Kオーバーサンプリング) | 4K 30p |
| 動画記録形式 | 10bit 4:2:2 (XAVC S-I, XAVC HS) | 8bit 4:2:0 (XAVC S) |
| ピクチャープロファイル | S-Cinetone, S-Log3 | S-Log2, S-Log3 |
| EVF | 約236万ドット (輝度向上) | 約236万ドット |
| 液晶モニター | 3.0型 約103万ドット バリアングル式 | 3.0型 約92万ドット 180°チルト式 |
| バッテリー | NP-FZ100 (約570枚) | NP-FW50 (約410枚) |
| 質量 (バッテリー込) | 約493 g | 約403 g |
このように並べてみると、α6700はセンサー、画像処理エンジン、AFシステム、手ブレ補正、動画性能、操作性、バッテリーといったカメラの根幹を成すほぼ全ての要素でα6400を上回っていることが分かります。
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センサー性能の違いをチェック
画質を決定づけるイメージング性能において、両者には世代間の大きな進化があります。
まず、センサー自体が異なります。α6700はα6000シリーズで初めて裏面照射型CMOSセンサーを採用しました。これは、光を効率的に取り込む構造で、特に暗い場所でのノイズを減らし、より広いダイナミックレンジ(明るい部分から暗い部分までを表現できる幅)を実現します。
一方、α6400は従来の表面照射型センサーです。常用ISO感度の上限は同じISO 32000ですが、実際の高感度耐性、つまり暗所での画質はα6700が有利です。
さらに、カメラの頭脳にあたる画像処理エンジンが決定的に違います。α6700は、ソニーの最上位フルサイズ機(α1やα7S IIIなど)と同じ最新の「BIONZ XR」を搭載しています。これは、α6400が搭載する旧世代の「BIONZ X」と比較して、最大約8倍という圧倒的な処理能力を持ちます。
この処理能力の差が、後述するAIオートフォーカスや高画質な4K/120p動画、そしてメニュー操作の快適さなど、あらゆる性能の土台となっています。
画質面でのもう一つの違いは、保存できるファイル形式です。α6700は、従来のJPEGやRAWに加え、10bit HEIF形式での記録に対応しました。JPEGが約1677万色しか記録できないのに対し、HEIFは約10億色の情報を記録できます。これにより、空のグラデーションなどをより滑らかに表現可能です。
オートフォーカス性能の進化点

α6400も発売当時は、被写体を粘り強く追いかける「リアルタイムトラッキング」で高い評価を得ました。しかし、α6700のオートフォーカス(AF)は、思想そのものが異なります。
最大の進化点は、α7R Vなど上位機種から受け継いだ専用の「AIプロセッシングユニット」を搭載したことです。
α6400のAFが、被写体の色や模様、距離を基に「反応」して追尾するシステムだったのに対し、α6700のAI搭載AFは、被写体の骨格情報(姿勢)を認識し、「理解」してピントを合わせ続けます。
この「姿勢推定技術」により、α6700は人物が後ろを向いたり、顔がマスクやヘルメットで隠れたりしても、その人物の胴体や頭部を認識し続けます。これにより、瞳の認識精度もα6400世代のカメラと比べて約60%も向上したとされています。
また、認識できる被写体も大幅に増えました。α6400は人物と動物の瞳AFに対応していましたが、α6700はそれに加えて、鳥、昆虫、車、列車、飛行機まで認識します。野鳥が飛び立つ瞬間や、モータースポーツなど、従来はピント合わせが難しかったシーンでの撮影成功率が劇的に向上します。
このAIによる「被写体を理解するAF」は、α6400の「パターンを追うAF」と比べて根本的な違いであり、撮影者はピントのことをカメラに任せ、構図やシャッターチャンスにより集中できるようになります。
動画撮影機能はどちらが優秀?

動画性能は、この2機種を比較する上で最も大きな分岐点と言えます。結論から言えば、動画撮影を重視するならα6700が圧倒的に有利です。
α6700は、6K(4Kの約2.25倍)もの豊富な情報量から4K映像を生成するため、非常に高精細な4K/60p撮影が可能です。さらに、最大5倍のスローモーション映像を作れる4K/120p撮影にも対応しています(約1.58倍の画角クロップが発生)。
一方、α6400の4K撮影は最大30pまでです。スローモーションはフルHD解像度でなら120p撮影が可能ですが、4Kでの滑らかな映像やスローモーションは撮影できません。
また、色の情報をどれだけ豊かに記録できるか(色深度)も決定的です。α6700は、プロの映像制作で標準となる「10bit 4:2:2」での内部記録に対応しています。これは、α6400の「8bit 4:2:0」と比べて64倍もの色情報を持ちます。
8bitでは、撮影後のカラーグレーディング(色編集)を行うと、空のグラデーションが縞模様になったり(バンディング)、色が破綻したりしやすいデメリットがありました。10bitに対応したα6700なら、S-Log3などのプロファイルで撮影し、後から自由度の高い本格的な色編集が可能です。
さらに、α6700はソニーの業務用シネマカメラの色再現を目指した「S-Cinetone」を搭載しており、編集なしでも人の肌を美しく、映画のような雰囲気で撮影できます。
手ぶれ補正の有無と効果の差
手持ちでの撮影、特に動画撮影や暗い場所での撮影において、手ブレ補正の有無は使い勝手に直結します。
α6700は、ボディ内に5軸の手ブレ補正(IBIS)を搭載しています。これにより、シャッタースピード最大5.0段分の補正効果が得られます。この機能の大きなメリットは、手ブレ補正機構(OSS)が内蔵されていないレンズ(単焦点レンズなどに多い)を使っても、手ブレを強力に抑えられる点です。
さらに、動画撮影時には電子補正を組み合わせる「アクティブモード」が利用できます。画角は少し狭くなりますが、ジンバル(安定化装置)がなくても、歩きながらの撮影で安定した映像を撮りやすくなります。
対照的に、α6400はボディ内手ブレ補正を一切搭載していません。そのため、手ブレを抑えるには、レンズ側に手ブレ補正機構(OSS)が搭載されているモデルを選ぶ必要があります。OSS非搭載のレンズで手持ち撮影、特に動画を撮るのは非常に困難です。

α6700とα6400を徹底比較:実用性とコスト分析

- デザイン・操作性の違い
- バッテリー持ちと実用性を比較
- α6700とα6400の価格差とコスパ
- 写真撮影メインならどっちを選ぶ?
- α6700とα6400のおすすめポイントまとめ
デザイン・操作性の違い

カメラは性能だけでなく、手に持った時の感覚や操作のしやすさも大切です。α6700は、α6400ユーザーからのフィードバックを反映し、操作性が大きく改善されています。
グリップとダイヤル
最も分かりやすい違いはグリップです。α6400は小型軽量を重視したためグリップが浅めでしたが、α6700は深く、しっかりと握り込める形状になりました。これにより、望遠レンズや大口径レンズを装着した際の安定感が格段に向上しています。
また、α6700はシャッターボタンの下に「前ダイヤル」が新設されました。α6400は後ダイヤルとコントロールホイールのみでしたが、α6700は3つのダイヤルを備え、絞り・シャッタースピード・ISO感度といった主要な設定をファインダーから目を離さずに素早く変更できます。
液晶モニター
液晶モニターの機構も異なります。α6400は、上下に動く「チルト式」です。自撮り(Vlog)撮影時にはモニターを180度上に向けられますが、この際、マイクをカメラの上部(ホットシュー)に装着するとモニターが完全に隠れてしまうという大きな欠点がありました。
一方、α6700は、横に開いて回転する「バリアングル式」を採用しています。これなら、マイクを装着してもモニターが隠れませんし、縦位置でのローアングルやハイアングル撮影など、チルト式では難しかった角度での撮影も容易に行えます。
接続端子
α6700は、動画撮影時の音声確認に不可欠な「ヘッドホン端子」を新たに搭載しました。α6400にはマイク端子はありますがヘッドホン端子はないため、録音されている音声をリアルタイムで確認できませんでした。充電やデータ転送の端子も、α6700は最新のUSB Type-C、α6400は旧式のMicro USBとなっています。

バッテリー持ちと実用性を比較
撮影中にバッテリーが切れてしまうのは大きなストレスです。α6700は、この点でも大きなアドバンテージを持っています。
α6700は、ソニーのフルサイズミラーレスカメラと共通の大容量バッテリー「NP-FZ100」を採用しています。これにより、液晶モニター使用時で約570枚の静止画撮影が可能です。
対して、α6400は旧型の小型バッテリー「NP-FW50」を使用します。撮影可能枚数は約410枚(液晶モニター使用時)にとどまります。
特に動画撮影はバッテリーの消費が激しいため、このスタミナの差は実用面で大きく影響します。α6400で長時間の撮影を行う場合は、予備バッテリーを複数個用意するか、モバイルバッテリーからの給電が必須となる場面が多くなります。α6700も予備バッテリーはあった方が安心ですが、NP-FW50に比べてバッテリー交換の頻度は確実に減り、撮影により集中できます。
α6700とα6400の価格差とコスパ

これまで見てきたように、α6700はほぼ全ての面でα6400を凌駕していますが、その分、価格も高くなります。
2025年10月現在の市場価格を見ると、α6700の新品ボディは約18万円台からとなっています。一方、α6400の新品ボディは約11万円台から入手可能であり、両者の間には約7万円以上の価格差があります。
中古市場に目を向けると、この価格差はさらに広がります。α6700の中古ボディが約16万円前後からであるのに対し、α6400の中古ボディは約7万5千円~8万円前後から見つけることができます。つまり、中古であればα6400はα6700の半額程度で入手できる可能性があります。
この価格差をどう捉えるかが、選択の鍵となります。
α6400のコストパフォーマンスは、発売から数年が経過した今でも非常に高いものがあります。約11万円(新品)や約8万円(中古)で、高速なAFと十分な画質を備えたカメラが手に入るのは大きな魅力です。
しかし、もしあなたが動画撮影での10bit記録や4K/60p、あるいはボディ内手ブレ補正を必要とするなら、α6400を購入した後にジンバルや高価なOSSレンズを追加購入することを考えると、最初から全てが揃っているα6700の方が、結果的にコストパフォーマンスが高くなる可能性もあります。
写真撮影メインならどっちを選ぶ?
動画はあまり撮らず、写真撮影がメインだという場合、どちらを選ぶべきでしょうか。この場合、何を撮りたいかによって答えが変わってきます。
α6400が適しているケース

風景、スナップ、カフェでのテーブルフォト、あるいは止まっている人物のポートレートなどが主な被写体であれば、α6400の性能でも全く問題ありません。リアルタイム瞳AFは人物や動物の目にしっかりとピントを合わせてくれますし、2420万画素の画質も十分高精細です。
むしろ、α6700よりも約90g軽量でコンパクトなボディは、旅行や日常の持ち歩きにおいて大きなメリットとなります。浮いた予算で高性能なレンズを1本購入する、という考え方も非常に賢明です。
α6700が適しているケース
同じ写真撮影メインでも、撮る対象が「高速で予測不可能な動きをするもの」であれば、α6700のAI搭載AFが強力な武器になります。
例えば、飛んでいる野鳥、フィールドを駆け回るスポーツ選手、予測不能な動きをする昆虫や小さな子供などです。α6400のAFでは追いきれなかったり、ピントが外れたりしてしまう場面でも、α6700のAI被写体認識AFなら、被写体を粘り強く捉え続け、決定的な瞬間を撮り逃す確率を大幅に減らせます。
また、前述の通り、ボディ内手ブレ補正(IBIS)を搭載しているため、暗い室内や夜景を手持ちで撮影する際の成功率もα6700の方が高くなります。
α6700とα6400のおすすめポイントまとめ
これまで詳細に比較してきたα6700とα6400のポイントを、最後にまとめます。
- α6700は2023年発売の次世代プレミアム機、α6400は2019年発売の高性能スタンダード機
- α6700は裏面照射型センサーと最新エンジンBIONZ XRで高画質
- α6400は表面照射型センサーとBIONZ Xエンジンを搭載
- α6700はAIプロセッシングユニットを搭載
- AIにより人物の骨格(姿勢)を認識し、顔が隠れても追従
- α6700は鳥、昆虫、車、列車、飛行機も自動で認識
- α6400のAFはリアルタイムトラッキングで、人物・動物の瞳に対応
- 動画性能はα6700が圧倒的に有利
- α6700は高精細な4K/60p、スローモーション用の4K/120pに対応
- α6400の4K撮影は最大30pまで
- α6700は本格的な色編集が可能な10bit 4:2:2記録に対応
- α6400は8bit 4:2:0記録
- α6700は編集不要で映画風のルックになるS-Cinetoneを搭載
- α6700は5軸のボディ内手ブレ補正(IBIS)を搭載
- α6400はボディ内手ブレ補正を搭載しておらず、レンズ側のOSSが必要
- α6700は深く握りやすいグリップと前ダイヤルで操作性が向上
- α6700はバリアングルモニターで、マイクと干渉せず自撮り可能
- α6400はチルトモニターで、マイク装着時にモニターが隠れる欠点あり
- α6700は大容量バッテリーNP-FZ100を採用し、スタミナが向上
- α6400は小型バッテリーNP-FW50を採用
- 新品の価格差は約7万円以上、中古ではα6400がα6700の半額程度の可能性も
- 静止画メインで携帯性重視ならα6400のコスパが最強
- 動画メイン、または動体撮影が主ならα6700が必須の選択肢




