モバイルバッテリーを充電しながら使用できたら便利だと感じたことはありませんか。しかし、この使い方には、知っておくべき充電しながら使うメリットやデメリットが存在します。特に、充電しながら使用するときの安全性については、多くの方が気にする点です。また、バッテリー寿命への影響と長持ちさせるコツや、具体的な発熱対策と安全に使うための注意点も知っておきたいところでしょう。
この記事では、便利なパススルー機能とは何か、その仕組みと活用方法から、外出先での効率的な充電方法、そしてスマホやタブレット充電中の使用で気をつけるべきことまで網羅的に解説します。さらに、同時充電対応モバイルバッテリーの選び方や、急速充電しながら使えるおすすめモデルも紹介し、絶対に充電中に避けたいNG行為についても触れていきます。
- パススルー充電の基本的な仕組みと潜在的なリスク
- バッテリーの劣化を防ぎ、安全に同時充電を行うための具体的な方法
- 自分の使い方に合ったパススルー対応モバイルバッテリーの正しい選び方
- パススルー機能を最大限に活用するための周辺機器の知識
モバイルバッテリーを充電しながら使うための基本知識
- パススルー機能とは?仕組みと活用方法
- 充電しながら使うメリット・デメリット
- 充電しながら使用するときの安全性について
- バッテリー寿命への影響と長持ちさせるコツ
- 発熱対策と安全に使うための注意点
パススルー機能とは?仕組みと活用方法

パススルー充電とは、モバイルバッテリー本体をコンセントなどから充電しつつ、同時にスマートフォンやノートPCといった接続機器へも給電できる機能のことです。この機能により、コンセントが一つしかないカフェや旅行先のホテルでも、モバイルバッテリーとスマホを同時に充電でき、翌朝には両方のデバイスが満充電の状態で活動を開始できます。
この便利な機能が正しく動作するには、一つ重要な前提条件があります。それは、ACアダプターからの入力電力が、接続されたデバイスへの出力電力よりも大きい必要があるという点です。もし、スマホが必要とする電力の方が入力を上回ってしまうと、モバイルバッテリーは充電されるどころか、不足分を補うために自身のバッテリー残量を消費し始めます。
そのため、パススルー機能を活用する際は、モバイルバッテリーと接続機器の両方の電力を余裕で供給できる、高出力なACアダプターを用意することが鍵となります。
充電しながら使うメリット・デメリット

モバイルバッテリーを充電しながら使う最大のメリットは、その利便性の高さにあります。前述の通り、コンセントが一つしかなくても複数のデバイスを同時に充電できるため、コンセントの取り合いになることもなく、充電待ちの時間を大幅に削減可能です。モバイルバッテリーが、事実上のマルチポート充電器として機能すると考えれば分かりやすいかもしれません。
一方、デメリットも明確に存在します。最も大きな懸念点は、バッテリーへの負荷です。
充電と放電を同時に行うと、バッテリー内部で通常時よりも大きな熱が発生します。この熱が、リチウムイオンバッテリーの化学的な劣化を加速させ、結果としてバッテリー全体の寿命を縮める主な原因となるのです。
また、品質の低い製品や、保護回路が不十分な製品を使用した場合、過熱が原因でバッテリーの膨張や、最悪の場合は発火といった安全上のリスクにつながる可能性も否定できません。したがって、利便性というメリットを享受するためには、これから解説するデメリットやリスクを正しく理解し、適切な製品を選ぶことが不可欠です。
充電しながら使用するときの安全性について

パススルー充電の安全性を確保するためには、製品に搭載されている保護機能と、法的な安全基準の確認が大切です。
バッテリーマネジメントシステム(BMS)の役割
高品質なモバイルバッテリーには、バッテリーを監視・制御するための電子回路であるBMSが搭載されています。これには、パススルー充電のような高負荷な状況下で安全を保つための重要な機能が含まれます。
- 過熱保護 (OTP): 温度センサーがバッテリーの異常な温度上昇を検知し、自動的に電力供給を停止します。パススルー使用時には最も重要な安全機能です。
- 過充電保護 (OVP): バッテリーが満充電になった際に、それ以上の充電を停止して過充電による劣化や損傷を防ぎます。
- 過放電保護 (ODP): バッテリー残量がなくなりすぎる前に出力を停止し、バッテリーが回復不可能なダメージを負うのを防ぎます。
信頼できるメーカーは、これらの保護機能が搭載されていることを製品仕様に明記しています。
PSEマークと届出事業者名の確認
日本国内で販売されるモバイルバッテリーは、電気用品安全法が定める技術基準に適合していることを示す「PSEマーク」の表示が義務付けられています。モバイルバッテリーの場合、丸形のPSEマークが表示対象です。
しかし、マークがあるだけでは十分ではありません。法律では、そのマークの近くに、製品の輸入や製造に責任を負う日本の「届出事業者名」を記載することも義務付けています。この事業者名の記載がない製品は、法律を守っていない非正規品や偽造品の可能性が高く、安全性が保証されていません。
製品を購入する際は、必ず本体やパッケージで「丸形のPSEマーク」と「日本の届出事業者名」の両方が揃っていることを確認してください。これが、安全な製品を選ぶための最低限のチェックポイントとなります。
バッテリー寿命への影響と長持ちさせるコツ

パススルー充電がバッテリー寿命に与える最も大きな影響は、「熱」による化学的な劣化です。リチウムイオンバッテリーは熱に弱く、40℃近い温度に継続的に晒されるだけで、蓄電能力の低下が始まるとされています。充電と放電を同時に行うパススルー充電は、この好ましくない高温状態を作り出しやすいため、バッテリーの寿命を縮める可能性があるのです。
この劣化を少しでも抑え、バッテリーを長持ちさせるためには、いくつかのコツがあります。
第一に、メーカー独自の高度な安全技術を搭載した製品を選ぶことです。例えば、Anker社の「ActiveShield™」のように、リアルタイムで温度を監視し、過熱を検知すると出力を自動調整する機能や、CIO社の「完全パススルー」のように、バッテリーが満充電になるとバッテリー回路をバイパスしてACアダプターのように振る舞う機能があります。
これらの技術は、パススルー充電時のバッテリーへの負荷を軽減するために設計されており、長期的な寿命の維持に貢献します。単純に「パススルー対応」と書かれているだけの製品よりも、こうした具体的な技術名が記載されている製品を選ぶことが、バッテリーを長持ちさせる上での賢い選択と言えます。
発熱対策と安全に使うための注意点
パススルー充電中の発熱をできるだけ抑え、安全に使用するためには、物理的な環境への配慮も大切です。
まず、モバイルバッテリーを充電しながら使う際は、風通しの良い場所に置くことを心がけてください。布やクッションの上、あるいは布団の中などで使用すると熱がこもり、バッテリー温度が非常に高くなる危険があります。硬いテーブルや床の上など、熱が拡散しやすい場所での使用が望ましいです。
次に、手で触れられないほど本体が熱くなっていると感じた場合は、直ちに使用を中止し、ACアダプターと接続機器の両方から取り外してください。これは、内蔵の過熱保護機能が正常に作動していないか、あるいは想定を超える負荷がかかっているサインである可能性があります。
また、定期的にバッテリー本体に膨張や変形がないかを目視で確認することも習慣にしましょう。バッテリーの膨張は、内部でガスが発生している危険な兆候であり、その製品は絶対に使用してはいけません。これらの注意点を守ることが、安全なパススルー充電の基本です。
モバイルバッテリーを充電しながら使うための実践ガイド
- 同時充電対応モバイルバッテリーの選び方
- 急速充電しながら使えるおすすめモデル
- 外出先での効率的な充電方法
- スマホ・タブレット充電中の使用で気をつけること
- 充電中に避けたいNG行為
同時充電対応モバイルバッテリーの選び方

パススルー充電に対応したモバイルバッテリーを選ぶ際には、単に機能の有無を確認するだけでなく、その「質」を見極めることが重要です。以下のポイントをチェックすることで、より安全で高性能な製品を見つけられます。
安全技術の具体性を確認する
「パススルー対応」という表記だけでなく、メーカーがどのような技術で安全性とバッテリー寿命への配慮を実現しているかを確認します。Ankerの「ActiveShield™」やCIOの「完全パススルー」のように、独自技術の名称とその仕組みを積極的に説明しているメーカーは、技術力が高く信頼できると考えられます。
法的基準の遵守を確認する
前述の通り、「丸形のPSEマーク」と「日本の届出事業者名」の2点が製品本体やパッケージに明確に記載されていることを必ず確認してください。これは安全性を担保するための最低条件です。
自身の使い方に合った容量と出力を選ぶ
スマートフォンを1〜2回充電できれば十分な日常利用者は、持ち運びやすい5,000〜10,000mAhのモデルが適しています。一方、ノートPCも充電したいビジネス旅行者やデジタルノマドは、20,000mAh以上の大容量かつ65W以上の高出力モデルが必要になります。自身のデバイス構成に合ったスペックを選びましょう。
急速充電しながら使えるおすすめモデル
ここでは、パススルー充電に対応し、かつ高度な安全機能を備えた具体的なおすすめモデルをいくつか紹介します。
Anker 733 Power Bank (GaNPrime PowerCore 65W)
ACアダプターとモバイルバッテリーが一体化したハイブリッドモデルの代表格です。ACアダプターモードでは最大65WでノートPCも充電でき、Anker独自の温度管理システム「ActiveShield 2.0」を搭載しているため、パススルー充電時の安全性にも配慮されています。
CIO SMARTCOBY Pro SLIM
バッテリーが満充電になると回路をバイパスする「完全パススルー」技術を搭載しているのが最大の特徴です。これにより、満充電後のバッテリーへの負荷を劇的に低減し、長期的な寿命の維持に貢献します。スリムで持ち運びやすく、デジタル残量表示も便利です。
Belkin BoostCharge Magnetic Wireless Power Bank 5K + Stand
iPhoneユーザーに特化したモデルで、MagSafeで吸着させながらパススルー充電が可能です。スタンド機能も備えており、動画を視聴しながらiPhoneとバッテリー本体の両方を充電できるという、シームレスな体験を提供します。
モデル名 | ブランド | 主な特徴 | パススルー技術 |
Anker 733 Power Bank | Anker | ACアダプター一体型、高出力(65W) | ActiveShield 2.0 |
CIO SMARTCOBY Pro SLIM | CIO | スリムデザイン、デジタル残量表示 | 完全パススルー |
Belkin BPD004bt | Belkin | MagSafe対応、スタンド機能付き | パワーパススルー |
外出先での効率的な充電方法

外出先でパススルー充電の利便性を最大限に引き出すためには、モバイルバッテリーだけでなく、電源となるACアダプターの選定も極めて重要です。
パススルー充電を効率的に行う大原則は、「入力電力 > 出力電力」です。例えば、100Wの出力が可能な高性能モバイルバッテリーを持っていても、20WのACアダプターに接続してしまっては、システム全体の能力が発揮できません。モバイルバッテリー本体と、それに接続するデバイスの合計消費電力を余裕で上回る出力を持つACアダプターを用意する必要があります。
近年主流となっている「GaN(窒化ガリウム)」技術を採用したACアダプターは、従来品よりも小型・軽量でありながら高出力を実現しています。複数のUSBポートを備えた100WクラスのGaN充電器を一つ持っておけば、ノートPC、モバイルバッテリー、スマートフォンを同時に、かつ効率的に充電する環境をどこでも構築できます。
スマホ・タブレット充電中の使用で気をつけること

モバイルバッテリーを介してスマートフォンやタブレットを充電しながら使用する場合、モバイルバッテリーだけでなく、使用するデバイス側でも発熱します。特に、高グラフィックのゲームや動画編集、ビデオ通話といった高負荷な作業を行うと、デバイス本体のCPUが発熱し、充電による熱と合わさってシステム全体の温度が著しく上昇することがあります。
このような状況は、スマートフォンやタブレットの内蔵バッテリーの劣化を早める原因にもなります。パススルー充電中にデバイスを使用する場合は、なるべくブラウジングやSNSのチェックといった軽度な作業に留めるのが賢明です。もし高負荷な作業が必要な場合は、一旦充電を中断するか、あるいはパススルー充電を行わずにデバイス単体で使用するなど、システム全体に過度な熱負荷をかけない工夫が大切になります。
充電中に避けたいNG行為
安全かつ快適にパススルー充電を利用するために、以下のような行為は絶対に避けるべきです。これらはバッテリーの劣化を早めるだけでなく、重大な事故につながる危険性もはらんでいます。
- 非認証・損傷したケーブルや充電器の使用:
PSEマークのないACアダプターや、被覆が破れていたりコネクタがぐらついたりしているケーブルの使用は、ショートや火災の原因となり大変危険です。 - 熱がこもる場所での使用:
前述の通り、布団の中やクッションの上、直射日光が当たる場所など、熱がこもりやすい環境での使用は避けてください。 - 異常の無視:
本体が異常に熱い、甘いような異臭がする、本体が膨らんでいる、といった異常のサインを見つけたら、直ちに使用を中止してください。そのまま使い続けると、発火や破裂に至る可能性があります。 - 水濡れ:
モバイルバッテリーは精密な電子機器です。水気の多い場所での使用や、濡れた手での操作は感電や故障の原因となるため厳禁です。
これらのNG行為を避けることは、自分自身の安全を守る上で最も基本的なルールです。
モバイルバッテリーを充電しながら使うための総括
- パススルー充電はモバイルバッテリーの充電とデバイスへの給電を同時に行う機能
- コンセントが一つでも複数デバイスを充電できる高い利便性がメリット
- デメリットは発熱によるバッテリーの化学的劣化と寿命の低下
- 安全な利用には入力電力が常に出力電力を上回る必要がある
- 高品質な製品には過熱や過充電を防ぐBMS(バッテリーマネジメントシステム)が搭載されている
- 製品選びでは丸形のPSEマークと日本の届出事業者名の確認が必須
- AnkerのActiveShieldなどメーカー独自の温度管理技術は安全性を高める
- CIOの完全パススルーは満充電時にバッテリー回路をバイパスし負荷を軽減する
- パススルー充電中は熱がこもらないよう風通しの良い場所で使用する
- 本体の異常な発熱や膨張は危険なサインであり直ちに使用を中止する
- システム全体の能力を引き出すには高出力なGaN対応ACアダプターが有効
- 充電しながらのスマホでの高負荷な作業はシステム全体の過熱を招く
- 非認証や損傷したケーブル・アダプターの使用は絶対に避ける
- 自身のデバイス構成に合った容量と出力を持つモデルを選ぶことが大切
- 利便性とリスクを正しく理解し適切な製品と使い方を両立させることが鍵となる